高分子凝集剤について

一般に無機凝集剤によってできるフロックの機械的強度はさほど強くないので、フロックの大きさや沈降速度にはおのずと限界がある。
長い鎖状の分子構造を持った水溶性高分子を用いればフロックの結合力が強められ、結果的には粒径が大きく沈降速度が速いフロックを得ることができる。

高分子凝集剤の場合、その凝集機能は吸着活性基であるカルボキシル基とアミド基による粒子への吸着と、粒子間の架橋によるものであり、無数の活性基によって数多くの粒子を吸着し、架橋する。
また、粒子に吸着した高分子相互の吸着作用によっても凝集を起こす。
(活性基による粒子への吸着は、静電気的結合および水素結合によるものと考えられる)

高分子凝集剤の必要添加量は、粒子表面の吸着状態に深く関係し、凝集剤が過剰に存在すると、粒子表面にある吸着活性点はすべて凝集剤分子によて占められてしまい、粒子表面は同一荷電となるため凝集剤本来の架橋作用は働かなくなる。
しかも、凝集剤自身は高分子電解質であり、親水性が強いので保護コロイドの機能により粒子を取り囲み安定化させるため、粒子は分散状態となる。
一方、凝集剤が少ない場合は、隣り合う粒子の吸着活性点を結合して架橋し、凝集作用を示す。

イオン性

高分子凝集剤のイオン性は、汚水を凝集させる場合、あるいは汚泥のマイナス荷電を中和したり粒子を凝集させる上で重要な物質となる。

分子量

分子量は、高分子凝集剤の分子の大きさを示し、一般的に分子量が大きいほど凝集力が強くなる。

汚泥処理における高分子凝集剤の効果

凝集剤の効果としては、汚泥処理プロセス(濃縮−調質−脱水)における減容化への役割が挙げられる。

  1. 濃縮
    同一汚泥では汚泥濃度を高めるほど脱水性が向上する。
    凝集剤添加による濃縮は、凝集剤によりフロックが形成され、沈降分離が容易となる事を利用したものである。
  2. 調質
    汚泥の中には下水汚泥における余剰汚泥のような水を多く含む、粘々したゲル状物質(一般的に粘物質と呼ばれる)があり、汚泥の濃縮性・脱水性に悪影響を及ぼす。
    調質は、汚泥粒子の粘物質のアニオン性を中和して脱水しやすい状態にし、固液分離性向上のための汚泥粒子を凝集しフロックを形成することが必要であり、凝集剤はその効果を発揮させるのに不可欠となる。
  3. 脱水
    汚泥調質と一体をなすもので、機械脱水に凝集剤は不可欠である。
    脱水機の能力だけでは低含水率・高処理量を達成することは困難であり、汚泥を脱水し易い状態で供給し、有効な調質を行うことが重要である。
    • 無機凝集剤
      真空ろ過機/加圧ろ過機
    • 高分子凝集剤
      ベルトプレス脱水機/遠心脱水機/スクリュープレス脱水機

高分子凝集剤の種類

  1. ポリアクリルアミド系−アニオン系高分子凝集剤
    • 組成
      アクリルアミドモノマーを重量により高分子化したポリアクリルアミド−ノニオン系高分子凝集剤を、アルカリの存在下で部分的に加水分解するか、アクリルアミドモノマーとアクリル酸ナトリウムモノマーを共重合することで得られる。
    • 特徴
      アミド基による水素結合、カルボキシル基によるイオン結合により、先に添加した金属水酸化物、金属イオンと反応し凝集反応が行われる。
    • 適用性
      下水処理においては、高度処理として凝集沈殿処理を行う場合に、PAC 等の無機凝集剤と併用して使用される。
  2. ジメチルアミノエチルメタクリレート系−カチオン系高分子凝集剤/DAM 系
    • 組成
      アクリルアミドモノマーとN、N−ジメチルアミノエチルメタクリレートモノマーを共重合することにより得られる。
    • 特徴
      疎水性が高い、吸湿しにくい、溶解時間がかかる、重合度が上がりにくい。
    • 適用性
      ホモポリマー(カチオン部のみのもの)で下水の混合生汚泥、消化汚泥のベルト脱水、その他反応条件が比較的緩やかな脱水機に適用されている。
  3. ジメチルアミノエチルアクリエート系−カチオン系高分子凝集剤/DAA 系
    • 組成
      アクリルアミドモノマーとN、N−ジメチルアミノアクリエートモノマー(あるいは NN−ジメチルアミノエチルメタクリレートモノマー及び両者)、及びアクリル酸を共重合することにより得られる。
    • 特徴
      溶解した時に、カチオン部とアニオン部が反応しないように pH が3以下になるように粉末酸を添加している。
      無機凝集剤が添加された汚泥に対しては、以下のように反応し複雑に絡み合っている。
      ノニオン部−無機物あるいは金属水酸化物に
      カチオン部−汚泥の負荷電あるいは他の凝集剤のアニオン部に
      アニオン部−金属イオンあるいは他の凝集剤のカチオン部に
      このような反応によって凝集力が高くなるため、脱水効果を向上することができる。
      溶解液の酸性が強い。
    • 適用性
      アニオン性の高い汚泥(余剰汚泥/混合生汚泥/消化汚)に対して有効であり、まず汚泥を無機凝集剤で荷電中和してから、両性高分子を添加し脱水機に供給する。
      (アニオン性の低いオキシデーションディッチ汚泥では、無機凝集剤を併用せず両性高分子凝集剤単独で効果を示す場合もある)

形状

  1. 粉末−昭和 30 年〜現在
    • ハンドリング面での問題(溶解作業性・粉塵)がある。
    • 大半の処理場で使用されている。
    • 大量輸送には、フレコン・コンテナ等が使用される。
    • 現状最も商品数が多い。
  2. エマルジョン(液状)−昭和 60 年〜現在
    • 原液中の高分子凝集剤の粒子は数ミクロンの大きさで分散しているため粘度が低く流動性が高い。
      また、定量性に優れる。
    • 粉末よりも微粒子状であるため溶解速度が非常に速い。
    • 中小規模の処理場で、ハンドリング改善・省力化を目的に採用されている。
  3. ディスパージョン(油分を含まない)−平成〜
    • 液体系を使用したいが、エマルジョンでは脱水ろ液や処理水の油分が問題となる時使用される。